中国からのインバウンド、回復の始まり~中国からの訪日外国人に対して水際対策緩和が発表~

日本政府は2月27日、3月1日より中国からの入国者に対する水際対策について緩和すると発表しました。これまで日本のインバウンドは感染が拡大した中国からの観光客に厳しい対策をとってきましたが、この水際対策の緩和はインバウンドの回復に勢いをつけそうです。

今回の緩和の内容については、今までの全員検査から中国(香港・マカオを除く)からの直行旅客便での入国者の最大 20%程度のサンプル検査へと移行するというものです。ただ、出国前 72 時間以内に受けた検査の陰性証明書の提出が引き続き必要となるので、全面的な解禁ではありません。それでも、この水際対策の緩和は充分にインパクトがあります。

現在のインバウンドは、コロナ禍以前(2019年1月比)と比較すると約55%まで回復しています。2023年1月の訪日外客数は、韓国が最も多く約56.5万人、2位の台湾が25.9万人ですが、インバウンドの中心だった中国からはわずか3.1万人です。2019年の1月は約75.4万人だったので、約4%しか戻っていません。実質ゼロともいえる数字です。そのため、今回の政府の決定は、インバウンド業界としては待望といえるものでしょう。

ただ一方で、中国から訪日する方達に対して水際対策を決定した当時の政府が間違っていたかというと、そうと言い切れない面ももちろんあります。昨年の10月に日本はインバウンドの水際対策を緩和して実質的に解禁しました。しかし同時期に中国がゼロコロナ政策を終了させ、そのため感染が急拡大し日本政府も対策をとる必要があったのです。しかしようやく感染拡大が落ち着きはじめ、日本政府も水際対策の緩和に舵を切ったということなのです。

また注意点として、問題がいくつか残っています。
まずは、中国政府が中国国外への団体旅行を認めていないことです。これは全ての国に対して一律ではなく、日本が解禁リストに含まれていないということです。遠くない将来に解禁されると思いますが、現段階で日本に訪れる中国人観光客は個人単位となります。

また以前からブログでも指摘していますが、フライト数が充分ではありません。今回の水際対策の解禁までは、成田国際空港、羽田空港、関西国際空港、中部国際空港のみにしか到着が許可されていませんでした。今後は他の空港でも認められるようになります。ただ、すぐの増便は難しいかもしれません。もちろん、今回の緩和を見越して準備しているとは思われますが。

そして大きな問題は、日本での人材不足です。
コロナの感染拡大によって、インバウンド需要は一気に蒸発しました。そのため、飲食やホテル・旅館などの宿泊施設などをはじめ、空港職員にいたるまで他の業界に移動した人材がいまだに戻っていません。さらにインバウンドだけではなく国内の観光需要も回復しているので、いっそう人材不足が顕著になっています。

とはいっても、以上の問題がインバウンド需要の回復の大きな妨げになるかというと、違うように思われます。今回の規制緩和とリバウンド需要はそれくらい大きな影響力があるのです。

これからインバウンドはお花見のシーズンを迎え、その後バカンス・夏休みの繁忙期に入ります。国内外の観光客の賑わいがようやく訪れそうです。中国からの訪日観光客の復活はインバウンド需要回復の大きな足掛かりとなり、インバウンドのアフターコロナがしっかりとした始まりをみせています。