インバウンド需要、急回復中 ~地域格差やリベンジ需要の一面も~

日本は昨年10月にコロナ禍の水際対策を緩和しました。その後の消費動向について三井住友カードと日本総合研究所が、クレジットカード消費のデータをもとに地域や業種ごとに分析しています。中国からの訪日観光客の影響が出ていたり、コロナ禍以前は「コト消費」だった傾向が「モノ消費」に揺れるなど、インバウンド需要の回復期ならではの結果が興味深いものになっています。

地域別のインバウンド決済額
最初に地域別にみると、地域によって大きな差が出ています。関東や中部、東北などではコロナ以前を上回るような水準まで回復していますが、中国人観光客に依存度が高かった近畿などでは回復に遅れが出ています。大阪では、韓国人観光客などの決済額は増加していますが、中国人観光客の決済額が大きく落ち込み、足を引っ張っています。

地域別のインバウンド決済額
(2019年12月全国のインバウンド決済額合計=10,000)

2019年12月2022年12月回復率(%)
関東5,7395,921103.2
近畿2,4101,79974.7
九州・沖縄78575295.8
北海道78463180.4
中部168216128.7
中国585188.4
四国373490.5
東北2034172.7
三井住友カードをもとに日本総研が作成


業種別
業種間でもインバウンドの決済額の回復度合いに違いが出ています。服飾小物ブランドや外食、衣服、テーマパークなどは2019年12月を既に大きく上回っていますが、一方でショッピングセンターは約83%、百貨店、家電、ドラッグストアなどは4割~6割程度しか回復しませんでした。

業種別のインバウンド決済額
(2019年12月全業種のインバウンド決済額合計=10,000)

2019年12月2022年12月回復率(%)
ショッピングセンター4,2073,48682.9
百貨店71230743.1
服飾小物ブランド419605144.4
外食304392129.0
衣服304428140.9
家電28918062.2
ドラッグストア1769453.6
テーマパーク131212161.8
三井住友カードをもとに日本総研が作成


円安効果
また円安効果も表れています。
カード当たりのインバウンド決済額では、コロナ改善と比較して全体的に上振れしています。理由としては、円安による購買力の向上や3年ぶりの訪日旅行に伴う「リベンジ消費」の効果が表れているようです。

今後の展望について
今後のインバウンド需要の回復について、やはり中国人観光客の戻りに左右されることになります。中国人観光客に対しての水際対策は、2013年3月に大幅に緩和されました。ただ完全に撤廃ではなく、また中国側で団体観光客に対して日本への観光は許可されていないなどの問題もあり、コロナ禍以前と同じように戻るにはもう少し時間がかかりそうです。

インバウンドでは地政学的リスクがつきものですが、今後はこのようなリスクを軽減・回避するためにも、国籍の多様化や分散化が必要となります。また観光業界の人材不足も、今後は大きな足かせになる可能性が高いでしょう。インバウンド需要は確実に回復しているので、この機会を逃さず、また需要を維持できるような対策がこれからは必要になってきます。