ゼロコロナ政策が続く中国からの観光客~市場見込みと異なる予想データが発表~

ゼロコロナ政策が続く中国からの訪日外国人の回復について、EYストラテジー・アンド・コンサルティングがレポートを発表しました。

日本では10月に水際対策の緩和が行われ、インバウンド復活の期待が高まりました。実際、韓国や台湾は敏感に反応しましたが、インバウンド最大の顧客である中国はゼロコロナ政策を継続しています。中国が今までと変わらなければ現状も何も変わらない、がっかりしたインバウンド関係者も多いと思います。

しかし今回のレポートでは、マーケットの予想とは異なる内容となっています。日本同様に、中国を主要な観光客としていたシンガポールとタイでは、水際対策の緩和翌月に2019年比で35%弱の回復を見せました。先行して緩和した近隣アジア諸国を参考にすると、日本も2022年11月には35%近い回復が期待できるとしています。いきなり元通りとはいきませんが、春節(中国の旧正月。2023年の休み期間は1月21日から1月27日まで)の頃には、去年と比べて底上げレベルは見込める可能性があります。

インバウンドと連動する国内観光客の行動の変化
コロナ禍で日本の観光客の行動も変化してきました。これまでの長距離の移動より短距離の移動が増加する傾向があり、いわゆるマイクロツーリズムが拡大してきました。マイクロツーリズムは、テーマパークや温泉といった分かりやすい観光資源に限定せず、地域独自の文化、歴史、ヒト等をありのままの素材の魅力を楽しむというものです。これは、韓国や台湾を中心に東アジア等から繰り返し訪れるリピーター訪日外国人や、文化や歴史体験を好む欧米からの観光客と同じであり、国内客と訪日外国人の集客でどちらを優先するかという問題の解決策になります。国内観光客向けのマイクロツーリズムの魅力は、訪日外国人への集客と一致しつつあるということです。観光資源の幅が広がりをみせ、旅行・観光に対して求める価値観が国内外で同じ方向に向き始めています。

中国からの訪日外国人は、当初の予想よりも伸びる可能性が出てきました。効果が見え始めるのは11月からですが、観光に対する魅力や要望ははっきりしてきており、インバウンドは確実に回復へと向かっています。